2017.03.22
  • 労働法規

正社員の兼業・副業について

政府がおこなっている働き方改革実現会議によると、政府は正社員の兼業・副業を容認する方針です。これまで正社員が兼業・副業をするケースはあまりなかったと思いますが、今後正社員の兼業・副業が増える可能性があります。

 前提として、憲法で職業選択の自由が保証されているため、正社員でも兼業・副業することは原則として自由です。ですが、兼業・副業の就業形態や就業内容によっては本業に影響がでてくるため、会社として兼業・副業を禁止する、もしくは兼業・副業の就業形態の見直しをさせる必要がでてきます。

 

具体例:ライバル会社での副業

会社の従業員が、ライバル会社で副業していたとします。会社の立場から考えると、この従業員の行動は容認できないと思います。ですが、この従業員の行動は理解できないわけではありません。未経験の業種で副業するよりも、同業他社であるライバル会社で副業したほうが、本業で培った専門性を発揮することで、自分の労働力を高く売れる可能性が高いためです。

 さて、会社としてはこの従業員の副業をやめさせたいところですが、職業選択の自由が保証されているため禁止するには根拠が必要です。根拠となるのは労働契約法です。

 

労働契約法 第3条

4  労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

 

労働契約法において「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。」と定められています。これを信義誠実の原則といいます。この信義誠実の原則には、信義に従うこと、つまり”労働者および使用者は互いに裏切らないこと”が含まれています。使用者である会社から見ると、従業員のライバル会社での副業は裏切り行為にあたるため、信義誠実の原則を根拠にライバル会社での副業を禁止できます。

 実務的なトラブル予防のために就業規則にライバル会社での就業禁止を明記することが望ましいです。就業規則に明記することで、就業規則違反でその従業員を懲戒処分することができます。またライバル会社で副業している従業員と話し合いを行うこと時も、同業他社での就業禁止を明記した就業規則を見せながら、説得することで話し合いがスムースに進む可能性が高いです。

 

~就業規則規定例~

第◯条 競業避止義務

会社の許可なく、同業他社に就業し、または自ら会社の業務と競争関係になる競業行為をおこなってはならない。退職後においても会社の営業秘密その他会社の利益に害する不当な競業行為を行ってはならない。

 

ライバル会社での就業は単純に裏切り行為というだけでなく、会社の機密情報や独自ノウハウの持ち出し、顧客の流出、優秀な従業員の引き抜きなど人材の流出の危険性が潜んでいます。現行の就業規則に同業他社での就業禁止の条文がない場合、追加することをおすすめします。

photo Nakamiya_s
Profile
社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員
中宮 伸二郎(なかみやしんじろう)
立教大学法学部卒業後、社会保険労務士となる。2001年西崎労務経営事務所入職。07年社会保険労務士法人ユアサイドを設立。企業の人事労務相談、雇用管理改善指導を行う。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、スタッフ双方に生じやすい法的問題に精通。07年より「派遣元責任者講習」の講師としても活動している。

"人材サービス"に役立つ情報をゲット!

派遣業界のトピックスから労務法規、スキルアップ、仕事効率化などのASPEXブログの最新投稿、業界で旬な話題を深堀するフリーペーパー「Digi新聞」発刊時のお知らせ、各種セミナー情報など、人材サービスに関わる人たちに"ハッケン"をお届けします。