
部長の顔を見るだけで1日が台無しになる気がするほどきらい。
上司でもあるまいに、ああしろ、こうしろと命令口調が気にさわる。
君のためだよ〜なんて、いったい何様のつもりだよ!
誰かに何かを命令されたとき、もしくは命令されたように感じたとき、人はすんなり受け入れられない心理状態になるようです。この状態は決してあなただけではなく、人の脳の特徴ですからどうぞご安心を。ということは、、あなたが誰かにものごとを頼むときにも同様のことが起こっているかもしれない、とも言えますね。職場であれ、家庭であれ「頼む」行為は日常茶飯事。相手の不機嫌な顔や返事と出会わないためにも、「上手に頼む」「さりげなく命令する」方法を会得しておいて損はありません。
まず最初の方法は、「否定しながら命令する方法」。
「私に惚れちゃだめよ。口説こうと思って日参しても無理だわよ」
ドラマの1シーンのような、銀座のママの台詞。みなさんにはこんな台詞を言われた経験がおありでしょうか。いつか私がママになったら口にしてみたいと思いつつ、未だその機会もその場面もありませんが。
これは、「否定命令」という技。最初にしてほしいことを述べて、後半部分に否定用語=〜だめよ、〜無理だわよ〜などを入れる方法を言います。
脳の特徴の一つ、「否定形が理解できない」ことを利用する方法。脳は最初の「惚れる」を思い浮かべてから、それを否定しよう、やめようと思いますが、脳の特徴の「抵抗する」気持ちが大きくなり、むしろ、やりたくなるのです。
「来週月曜のデート、無理しないでね」〜となると、「ちゃんと残業ことわるよ」となりますし、
「手伝ってなんて、口が裂けても言えないわ」〜と優しく言われると、私、手伝いますと、声をかけたくなります。
それが一方的に、来週のデート、忘れないでよ!と言われると、「俺だって忙しいだよ」と言い返したくなるかもしれません。
また、「資料の山と格闘してるんだから、一緒に片付けてよ!」と、眉間にしわ寄せて指示されると「今、やろうと思ってたよ」と、喧嘩腰になるシーンが予想できます。
人は「命令されると抵抗する」「自分の意思で言ったことは守ろうとする」の二つの法則を生かした方法。なかなか使いでがありますね。
二つ目は、理由や原因がはっきりさせて、相手が動きやすくさせるという鉄則。
「あの顧客への提案書は今日中に完成させろよ」と、いつもの大声で上司からの指示が下りたとき。「残業しろ!ってはっきり言えばいいでしょ」なんて、ちょっとひねくれた受け取り方をした経験が私にはあります。「宿題忘れたら、また、先生に怒られるわよ」という母の言い方に、「わかってるよ。今、やろうと思ってたのに」と口を尖らせていた子供時代のまんまです。
相手がその気になって不満を募らせない方法は、まず、命令する理由や原因を先に伝え、それから指示を加えるやり方です。
「明日の午前中にチェックできると、間違いの手直しもできるから君の提案は万全だ。部長として鼻が高いよ」
「昨日もちゃんと宿題をしてさすがだなって思ったわ。今日もしっかりやれるとお母さんは嬉しい」
これでいかがでしょう。
理由と結果の法則は、人を「すんなりリード」できるのです。
最後の3つ目は、命令や指示する内容を、自分でなく誰かの言葉として伝える方法。ああしろ、こうしろといった直接的な命令を、相手が受け取りやすい人の力を借りるといってもいいでしょうか。
「あんまり無理するな」と端的に言うのも一つですが、「故郷のお母さんが身体だけが心配だって言ってたぞ」という台詞は、素直にうなずきたくなる殺文句の代表です。
また、企画書がうまくまとまらないと頭を抱える部下に、「それは君の尊敬する◯◯部長がよく言ってたじゃないか。困ったときはこの方法があるってね」という言い方はいかがでしょうか。相手が尊敬している会社の部長、大学・高校時代の先生、故郷の友人などなど。これらは、いかに相手の気持ちをゆさぶる人間関係までも知っていることです。上辺だけの付き合いだけで、人は動かせないと言えるかもしれません。